仕事の全体像イメージをメンバーで共有することの大切さ

伝えることは難しい

急に現場事務所の所長に異動した時のことです。幸運にも契約が取れた不慣れな分野のプロジェクトで、全国4か所の運用施設に常駐して顧客対応や作業員をサポートする責任者が必要になりました。新たに採用する担当者に移管するまでの暫定ということだったのですが、結局2年近く常駐しました。私の異動から少し遅れて数名が補佐役で採用され、私の片腕として活躍して頂いたのは日本企業で開発を長年経験され定年退職後派遣会社に就いておられたK氏でした。現場作業員が事故や作業ミスを起こさないように、客先で失礼のないように、朝8時から23時までサポートするのは本当に辛い仕事でしたがよくやってくれました。しかし、簡単なデータ入力作業を行うエンジニアは社会経験が短く、基本的な社会行動がとれない人がいて問題を起こし、客先より注意を受けました。

 

1年目は日々の仕事で精いっぱいだったのですが、2年目は作業品質を上げようと、プロジェクトが始まる前に勉強会を企画し、開発経験のあるK氏にも講師をお願いしました。目的は「自分達の仕事に興味を持ってもらい、自発的に問題に気づき解決できるようになる」でした。K氏は資料の基本的な部分は後で読んでおいてくださいと言い、自分の知識や経験からやや高度な説明をしました。時間枠に対して多くの情報を詰め込んだせいかやや早口で説明に終始に、質疑応答の時間は短めでした。内容は良かったのですが、以前はコンビニでアルバイトをしていた経験3か月の人に伝わったかは疑問でした。ただ勉強になったと言ってくれた人も何人かいて、雰囲気は明るく前向きになっていました。

 

構造が高度になって想像力が追い付かない?

もっと基本的な原理や、今やっている手順書の作業から順を追って高度なものへの説明をした方が良かったのでは?と一瞬思いましたが、やはりこれはこれで良かったのでは?という気持ちになりました。一緒に何か勉強した、ということだけでもモチベーションや一体感を持つということで意味があると思えたのです。

 

ただ、受講者の考え方には少し驚きました。物事を全体でとらえずに断片的に捉えているだけなのです。互いの相関をイメージしながら理解していないのです。30年前の製品と比べ、今はトラブルシューティングが難しくなっています。ハードウェアー素子がコンパクトになりブラックボックス化され、不具合の原因がハードかソフトか切り分けしずらいのです。昔の原始的な製品を知っていれば今の製品でも何とか対応できるときもあるのですが、昔の製品やその原理を知らない人は不具合の原因を究明するときに、頭の中にシステムの全体像や計測器で測った波形がイメージできないようです。

 

仕事の段取りをイメージし共有する訓練

それと同じことがすべてに言えます。リーダーとして仕事を取りまとめ段取りを組むときでも、表面上の作業項目を効率良く進めることも大切ですが、それぞれの作業は互いに関連し合っています。もし、一つの作業で不具合が出たときは他のどの項目に影響がでるか、あらかじめ書き出せれば書き出した方がいいのですが複雑になり、日々刻々状況は変化するため修正が大変です。

 

私はプロジェクトの段取りを自分のノートに書いて毎日夜更新していました。メンバーで共有するときはホワイトボードも活用しながら毎朝確認します。そうすると、自分は次は何をするのか、が自然と分かってきます。みんなが担当している作業も見えてきます。問題が起きないか気配りしながら仕事をすることが当たり前になってきます。上司が部下に今日はこの仕事をやれとか言わなくてよくなります。全体が見え、そうするといつまでにこれをやっておかないといけない、だから今日はこれをやっておいていいですか?と上司に問いかけるようになります。毎日の積み重ねですが、繰り返しているとメンバーの会話も段取りもスムーズに自然になってきます。

 

作業手順書も本来そういった段取りまでイメージして作成されないといけないのですが、時間的制約があり練りこみ不足だったので、現場で作業員の立ち位置まで考慮したリハーサルが行われ手順書の不足を想像し、動きを補うことが行われました。また「フォーメーション研修」という名で実際の装置を並べて現場作業を実演する研修を企画しました。これは結構有意義だったのですが、その場で出たノウハウを蓄積できればさらに良くなると思います。