A社における改善活動履歴(#3、草の根活動による準備期間)

準備期間(2002年12月~2003年3月

2か月ぐらいかけて、関係者からヒアリングを実施しました。

この会社は規模が大きくなって当時まだ数年しか経っておらず、急成長したベンチャー企業といった雰囲気の会社だったので社内インフラが整い出したばかりでした。また郊外に開発および生産拠点があるため、家を買って地域に居着く人が多く、離職率も低く人材の流動性は非常に少ない会社でした。

 

そのせいか、ヒアリングで会話する社員は私の使う言葉や考え方が聞き慣れないようで、私を「現場の人間」か「社内インフラを作る人間」の2つのどちらに分類していいのか戸惑っていました。

また、この会社の社内インフラを作る人達は自分の担当の仕事を黙って行い、事前に現場の意見を取り入れようと自発的に動くことは少なかったようです。

 

ヒアリングして現状の問題点や解決案を聞いても、皆決まりきったことしかしゃべらず、少し深堀りすると、今度は急に超詳細な部分のボトルネックを説明し、それさえなければ後は自分の力でなんとかなると力説する部分まで、全員ほぼ同じストーリーでした。(多分目先の問題が解決されたらまた別の問題が浮上してくるのでしょう)

 

「これはかなり根が深い。社員教育等手間の掛かる問題が多すぎる。これに触れて騒ぐのは止めておこう。自分が命じられたプロジェクトマネジメントの社内プロセスだ改善だけに止めておこう」と思いました。とりあえず問題点の調査と改善施策案を発表し、私はプロマネだけのリーダーとなり、他のテーマは他の人に振ろうと考えました。

問題点をもう少し具体的に説明すると、「十分なマーケティング活動ができてない」、「戦略的製品開発ができていない(製品ポートフォリオ、社内リソースの中期計画、等)」、「人材が育ってない(開発者、リーダー、マネージャー)」、「海外販社との連携不足」等です。

 

テーマを分けて、私はプロジェクトマネージメントに限定してさらに調査しました。

この会社には複数のプロジェクトの状況を管理する部署がなく、あるのは「開発会議」と称して役員、部長、プロジェクトリーダーが集まり、プロジェクトごとに意見を交換し合う場だけでした。

 

エンジニアとして誇りを持って製品を開発するプライドは立派ですが、開発時の共通フレームワーク化が遅れており、核となる開発の方向性を好きなだけ議論した後は、各パートに分かれて好き勝手に設計するのです。過去のノウハウの蓄積も活用もされていません。

 

この会社は、「製品を開発する」、「製品を作る」、「製品を売る」の活動を行う人達がいるだけです。後は経理、業務等の事務処理を行う人がいるだけです。ある意味ぜい肉のない究極の人材活用組織かもしれません。

調べれば調べるほど問題は深く、これはこれでユニークですが一つの完成された組織に思えてきました。根底の部分の改革をすれば解決するような気がします。「カリスマ開発者が超人的に全社を仕切る」もしくは「インフラを整え一部の社員が事業部長の補佐として事務局メンバーとなり、プロジェクトや現場をサポートする。」です。

 

複数のプロジェクトの横串しを通すプログラムマネジメントを行うことの方が、各プロジェクトの進捗管理を可視化より優先すると考え、そのアイデアを経営会議で説明しました。

 

経営会議では、「人材が育ってない」、「開発の共通化と活用が出来ていない」等は賛同してもらい、各分野のキーマンが活動に参加できるよう協力してもらことになりました。